もうかれこれ3年くらい前のこと、俺がまだチェコにいた頃、CMとポスターに出ることになった。ちょうどユーロ2004(サッカー・ヨーロッパ選手権)が開催されるということで、そのためのCMだった。このCMは東欧10カ国で流れていたらしい(大会中はドイツにいたのでCMをライブで見てない)。

 撮影は半日ずつかけて2日で終わったけど、その前に2週間くらいかけて、剣道とワイヤーアクションの練習をさせられた。剣道では手の皮がむけまくり、ワイヤーアクションではワイヤーに吊るされまくって、腰がすりむけた。
 設定では侍だったけど、侍なのか忍者なのかよくわからない格好をした。メイクもしたけど、これがまた気持ち悪く、しかも、メイクのモデルにしたのが歌舞伎の写真だった。撮影のカットは、どうやら「Kill Bill」からパクっているような気がした。とにかく日本的な絵を撮りたかったらしく、撮影には盆栽や寿司までわざわざ用意された。寿司は撮影前にこっそりつまみ食いした。
 
 日本への外国人の偏見や勘違いはいろいろあるけど、海外でみられる侍は、「なんとなくこんな感じだろ?」というノリで作ったと思うようなものが多い。しかも、日本なのか中国なのか韓国なのか、海外では日本やアジアのイメージがごちゃ混ぜになっていることがよくある。
 実際に「ジャッキーチェンは日本人なのか?」と、けっこう多くの外国人に質問された。そして、「違う」と言っても、「でも、ブルース・リーとジェット・リーは日本人だろ?」と突っ込んでくる。中国と韓国と日本では、一緒の言葉を話していると思っている人もいる。

 こんな勘違いもあるけど、ヨーロッパにも侍に似た騎士がいて、「武士道」の中では武士(侍)に対して何度か騎士が引き合いに出されていた。しかし、宗教的な影響を受けている騎士に対し、言葉でしっかりと表されていないような道徳的な掟「武士道」の影響を受けている武士は世界的にみても全く独自の形をしているものだと書かれていた。

 今では武士の制度もなく侍もいないけど、今から約100年前「武士道」の中で、「武士道はすでに滅びつつあるが、完全には消え去りはしない。鳥のくちばしや、魚のヒレがすぐに無くならないように、武士道の700年の蓄積されたエネルギーはすぐには止まらない」と書かれていた。また、「最も進んだ思想を持つ日本人であっても、一皮むけばそこに侍が現れる」とも新渡戸氏は言っている。多かれ少なかれ、武士道精神、侍魂はどんな日本人にも伝わっている。俺にも。

 まわりのものを取り入れることは大切なことだし、スローガンを「SAMURAI BLUE 2006」にしてもいいけれど、ただのファッションとしてではなく、「武士道」の影響を受けた根本的な日本人らしさを忘れないようにしたい。